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マックで大高と別れて、急いで学校に戻る。
時間にうるさい風舞先生だから、少しでも遅れたらいろいろ言われそうだ。
教室の前で乱れた息を整えてからドアをノックすれば、中から返事が返って来た。
「失礼します」
中に入れば、1枚のプリントを手にした風舞先生が教室の中央の席に座っている。
私は先生の目の前の席に、相変わらず黙っているとワイルドだなぁと思いながら座った。
「神崎は両親や親戚の方がいないんだな。ずっと1人暮らしだと聞いた」
「はい。そうです」
「それでこの成績に生徒会までやって、すごい。いろいろ辛くはないか?」
「全然大丈夫です。むしろ楽しくて仕方がないくらい。学校にも不満はないし、これから文化祭への準備も楽しみです」
「そうか。進路はどうするんだ?お前の成績ならどこにでも行けるが、大学には頑なに行かないと言っているらしいな」
「はい、行きません。行く意味が分からないので」
「じゃぁ専門学校か?」
「今はそれが一番近いかもしれないです。まだやりたいことも決まっていないので。とりあえず、選択肢を広げられるように、今出来ることはしていくつもりです」
「なるほどな、さすがだ」
なーんて、口だけだけど。
一見至って普通の生徒と教師の面談のように見えるけれど、この先からが問題だ。
「ところで神崎。この前、お前の知り合いらしき人が学校内に入ってきたな」
「……すいませんでしたー」
「お前の婚約者だとか、イギリスの王子様だとかいろんな噂が流れているが……」
「すべてまっぴらの嘘なのでご安心ください。騒ぎを起こしてしまって本当にすいませんでした!」
「………」
もう遼さんのことは終わったし、このことでいろいろ聞かれるのはめんどくさい。
頭のてっぺんから爪先まで舐めるように視線を這わせる風舞先生。
「……あの、何か?」
「神崎、お前はよぉ……教師の俺が言ってはいけないことだけど。お前、モテるだろ?」
「はい?」
突拍子もないことを言い出したワイルド教師に、私の目は点になる。
ガタ、とイスから立ち上がってそのまま、身体を私へグイッと近づけて。
右手で、私の顎を持ち上げた。
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