第3恋

14/37
前へ
/842ページ
次へ
マックで大高と別れて、急いで学校に戻る。 時間にうるさい風舞先生だから、少しでも遅れたらいろいろ言われそうだ。 教室の前で乱れた息を整えてからドアをノックすれば、中から返事が返って来た。 「失礼します」 中に入れば、1枚のプリントを手にした風舞先生が教室の中央の席に座っている。 私は先生の目の前の席に、相変わらず黙っているとワイルドだなぁと思いながら座った。 「神崎は両親や親戚の方がいないんだな。ずっと1人暮らしだと聞いた」 「はい。そうです」 「それでこの成績に生徒会までやって、すごい。いろいろ辛くはないか?」 「全然大丈夫です。むしろ楽しくて仕方がないくらい。学校にも不満はないし、これから文化祭への準備も楽しみです」 「そうか。進路はどうするんだ?お前の成績ならどこにでも行けるが、大学には頑なに行かないと言っているらしいな」 「はい、行きません。行く意味が分からないので」 「じゃぁ専門学校か?」 「今はそれが一番近いかもしれないです。まだやりたいことも決まっていないので。とりあえず、選択肢を広げられるように、今出来ることはしていくつもりです」 「なるほどな、さすがだ」 なーんて、口だけだけど。 一見至って普通の生徒と教師の面談のように見えるけれど、この先からが問題だ。 「ところで神崎。この前、お前の知り合いらしき人が学校内に入ってきたな」 「……すいませんでしたー」 「お前の婚約者だとか、イギリスの王子様だとかいろんな噂が流れているが……」 「すべてまっぴらの嘘なのでご安心ください。騒ぎを起こしてしまって本当にすいませんでした!」 「………」 もう遼さんのことは終わったし、このことでいろいろ聞かれるのはめんどくさい。 頭のてっぺんから爪先まで舐めるように視線を這わせる風舞先生。 「……あの、何か?」 「神崎、お前はよぉ……教師の俺が言ってはいけないことだけど。お前、モテるだろ?」 「はい?」 突拍子もないことを言い出したワイルド教師に、私の目は点になる。 ガタ、とイスから立ち上がってそのまま、身体を私へグイッと近づけて。 右手で、私の顎を持ち上げた。 .
/842ページ

最初のコメントを投稿しよう!

343人が本棚に入れています
本棚に追加