第3恋

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気付けばもう、西に傾いた陽が裏山の頂きに触れそうな時刻。 やっぱり私を一番最後にしたのは正解としか言いようがなかった。 「すごいな……2時間半も普通に話してたのか」 「私の話術がすごいんですよ」 「否定はしない。本当に神崎と話していると時間の流れを忘れてしまう。気を付けないとな」 「仕事が終わらなくなったら大変ですしね。それにしても、人がいなくなると学校は本当に静かですねぇ」 「他の先生方はもう面談も終わって、部活もないから仕事がない限り帰ったんだろう」 「先生は?これからまだ仕事があるんですか?」 「いや、今日はすぐに帰る」 「ははぁん、さては新恋人とデートですねぇ?」 「そういう予定があれば嬉しいんだけどな。神崎、お前が相手になるか?」 「はは、生徒と教師の禁断の恋ってやつ?普通の女の子は好きですよねぇ。私は興味ないけど」 「だろうな。お前は普通じゃない」 「私の中で私は普通です」 誰もいない、ひっそりとした長く続く廊下を歩きながらの会話は。 頭の奥に染み入るように、響いていた。 「それじゃ、気を付けて帰れよ」 「はい、先生も。今日はありがとうございました」 「遅くなってしまって悪かったな……」 「全然です!楽しかったですから」 「………」 「どうしました?」 「いや……そういえば最近、変質者がよく出るって聞いていてな。お前、本当に大丈夫か?」 「全然大丈夫ですって!変質者にはよく会うんで」 「おい、全然大丈夫じゃないだろ。やっぱり心配だ。俺の車で送って行く」 「いやいやいや、それは危険ですって。学校関係の誰かに見られたら誤解されるかもしれないですよ?」 「理由がしっかりあるんだから大丈夫だろ。いいな、ちょっとここで待ってろよ!」 そう言って、足早に職員室に向かった風舞先生。 あちゃー……どうしよう、家まで送ってもらうとなると大和と玲央のバイクがあるし、1人暮らしじゃないことがバレるかもしれない。 それよりも、いくら先生とは言えども男の人の車に送ってもらった事実を柚夢が知ったら激怒されそうだ。 どうして僕に迎えに来てって言わなかったんだ!とか言いそう。 ……いや、絶対に言われる。 .
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