第3恋

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何としてでも家まで送ってもらうのは阻止しなければ。 考えろー考えろー私の単細胞思考ー! 「……何、唸ってるんだ」 「へっ?……お早いご到着で」 「逃げられたら元も子もないからな。さ、行くぞ」 「はーい」 まだ何も思い浮かんでないからかなり焦っているけど、表に出さない方法を私は知っている。 ここで墓穴を掘るわけにはいかない! 「……おい」 「はい?」 「どうして後部座席に乗るんだ?助手席でいいだろ」 「そんなそんな!風舞先生の車の助手席になんて恐れ多くて乗れません!」 「お前、いつからそんなに俺を敬うようになったんだ?明らかにおかしいだろ」 「いやいや、初めてお会いしたときから頭の上がらない相手だと思って……」 「なら、さっきまでの会話はどういうことだぁ?敬ってる相手に元カノの話を無理やり聞き出すのかぁ?」 「あははー!冗談ですよ冗談!さ、早く行きましょう!」 これ以上の悪あがきは諦めて、大人しく助手席へと乗り込んだ。 本当は、助手席だと誰かに見られるかもしれないから、後部座席にしようとしたんだけど。 誰かに見られて困るのは私だけだろうし、その理由を探られるのは危険だ。 どうか、よく見知った顔と鉢合わせしませんように!! 「お前の家はどこだ?」 「……中部です」 「中部のどこだって聞いてんの」 「……O市」 「その間は何だ、その間は。何かやましいことでもあるのか?」 「まさか!」 エンジンをかけて横目でじろりと睨んだ先生に、飛びっきりの笑顔で抵抗。 言い訳、マジでどうしよう。 「先生の家はどこなんですか?」 「俺はU市」 「それじゃぁ反対方向じゃないですか!やっぱり駅まででいいですって!」 「いきなりどうした?もう遅い」 「だって先生、疲れてるでしょ!?私なんかに時間使っちゃダメですってば。駅からならもう着いたも同然だし」 「大切な生徒なんだから、時間を使うのは当たり前だろ?大人に気を遣うな」 「でも……」 「あー!だから!俺がいいって言ってんだからいいんだよ。黙って乗ってろ」 「……はい」 な、何か今……大和を見たような気がした。 .
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