2.意外すぎる幹部交代

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家に帰ってきて部屋で弥生がおいらに言った。 「あたしで勤まると思う?」 「部長?勤まるよ。あの大槻でも務まるんだから」 おいらは、弥生が作ってきてくれたごちそうを食いながら返事した。そうしたら弥生は、 ため息をついた。 「大槻先輩が務まるものでもたいていの人には務まるないわよ」 「そうかなあ」 大槻って、弥生が意識するほど立派な大人物に見えるわけでもない。 大槻よりも南や長瀬の方がよく動いていたようにも思う。 「大槻先輩は、人柄がいいのよ。とってもいい人なの。 みんなが…南先輩たちも含めて大槻先輩を尊敬してるわ。 人として、最高の人だと思うの。 神様ってこんな人なんじゃないかなって思うくらいに」 大槻のことを話す弥生の瞳は、キラキラと輝いているように見えた。 あまりにも他の話をするときとは違うから、思わず聞いてしまった。 「弥生は、大槻が好きなのか?」 「好きよ。尊敬してる。あたし、大槻先輩に憧れて写真部に入ったのよ」 おいらのこと、好きにはなってもらえないとわかってはいても、こうはっきり大槻のこと 好きだなんて言われると、がっかりするなあ。でも、おいらも男だ!何でも協力しようっ て決心したぞ! 「どうやって告白するんだ?」 「え?」 弥生の顔が明らかに真っ赤になった。 「やだ、勘違いしないでよ。その、好きではないの。 なんて言えばいいのかしら。 あたしが、おとうさんや先生を尊敬するようなもの。 恋愛じゃないのよ」 「ほんとか!?」 「ほんとよ」 「な、なーんかめっちゃ食欲が出てきた!おかわり」 「変な子ねえ」 なんかうれしくなってきたぞ!!大槻が好きなわけではないんだ。 なんかうれしいぞ。この様子だったら、誰も好きな奴なんていないようだぞ。 スキナヒト ハ ホカニイルノ 変な声!? 振り返ったり辺りを見回しても誰もいない。気のせいだと割り切ろう。 今日はほんとにいい日だなあ。笑いがとまらんわはははは! 人の良さを見てくれる、見抜いてくれる人もいるんだなあ。 そういう人は誰にでも尊敬される。 自分のことばかり考えていてはきっといけないんだ。 大槻のように(大槻がどのような人間なのかまだわからないが) 誰からも尊敬される人になるためにはいったいどうすればいいのか。 おいらの中身、全部換えなければ無理かな。 また少し、賢くなったかな。 いつか、おいらを勘当したとーちゃんを後悔させてやろう。
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