1人が本棚に入れています
本棚に追加
3.驚きの恋愛事情
最近2、3日家を留守にして旅に出る。
そうして、帰ってきたら弥生にあったことを全部しゃべるんだ。
弥生は笑いながら聞いてくれる。
今回もたくさんのみやげ話を持って一週間の北海道への長旅から帰ってきた。
今回は初めて飛行機ってのに乗ってみた。
おいらが弥生の顔を見た途端、弥生のほうからしゃべり始めた。
おいらが旅行に行っていたことなんてすっかり忘れたみたいに、自分のことを…!??!!!!
「なんだって!?」
「だから、風間君の隣の席になったの。
風間君もあたしのこと覚えててくれたのよ。
あたしうれしくって」
おいらは、思わぬライバルの出現に焦った。
「誰だよ、風間って」
「小学校の時の同級生。神戸に引っ越したの。
去年高校野球の地方大会の写真を撮りに行ったとき応援団の一人として来てたの。
さらにかっこよくなってたのよ。
あ、写真見る?応援してる姿で、白黒なんだけど」
信じられなかった。
大事そうに、定期入れの中から写真が出てきたんだ。
望遠で撮ってさらに大きくしたとかで、最初から風間だけを狙ったみたいにきれいな写真だった。
秋山や、市原、大槻や、南、おいらが知っている男達誰とも違う雰囲気の持ち主だった。
精悍な顔つきをしていた。
「今日、塾行ったら席替えをしていてね、あたしが席に座ったら後から風間君が座ったの。
風間君、今月からで、テキストまだ持ってなかったからあたしがみせてあげたのよ」
なんてうれしそうに言われると、なんか、むかむかってくる。
おいらの知らない男の話をする弥生がなんだか知らない女に見えてしまう。
「今度会いたい」
「数学の授業は来週までないから、来週になったらね。
で、ソルはどこで何してたの?」
おいらは、帰ってきたときよりも意気消沈していたから、
いつもみたいに、迫力ある説明体験談にならなかった。
それでも、自分が幸せだったらしい弥生はいつものようにニコニコ聞いてくれてよけい、くやしかった。
最初のコメントを投稿しよう!