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弥生には去年嫁に行った姉葉子がいる。
今日初めておいらはその人を見た。
顔は弥生と違って派手な顔つきをしており、よくしゃべる人だと思った。
旦那と二人で遊びにきたわけだが、その旦那が誰かに似てるような気がするが、気のせいか?
姉貴がしゃべっている間中、弥生は話を聞いてばかりいた。
弥生のこの性格形成には、この姉が何役もかっているように思える。
きっとこいつがしゃべってばかりいるから弥生のしゃべる時間がなくなったんだぜ。
弥生は否定するだろうけど、きっとそうさ。
「弥生ちゃんは小学校、ゆめが丘小学校だったんだよね。
実は、僕の従兄弟にゆめが丘小学校に行ってた子がいてね。
結婚式には来てなかったけど、君と一緒の学年なんだ」
「誰?」
弥生の姉が、二人の間に割って入って聞いた。
「風間一平って言うんだけど、知ってる?」
弥生の手が止まった。硬直したと言った方が正しいかも知れない。
おいらだって、驚いた。
そうなんだ。さっき誰かに似てると思ったのは、他でもない。風間に似てたんだ!
そして事実、二人は関係があった。
「弥生知ってるの?この前会ったんだけど、すごいイケメンな子」
「うん…。知ってる」
ウソ ホントニ?
シンジラレナイ。
弥生の心が流れてきた?!
おいらはそのことにも驚いた。
おいらたち、ルスの国のもの達は生まれたときより、多少の魔力を持つ。
そして、それを訓練によって引き出して行くんだ。
おいらの場合王家の生まれだから、潜在能力も他の妖精たち以上なわけだけど、
さぼってばかりいたから言うほどの能力は持っていない。
できることと言ったら、動物としゃべること、飛ぶことぐらいだ。
なのに、おいらの心に人間の心が流れて来るようになったんだ。
これは、王家の人間なら自然なこととされているけれども、おいらにはその能力がなかった。
だから余計に長老達からは半端者扱いされて、おいらは、非行に走ってしまった。
今になって、この能力が出て来たって、王家に勘当された身だからうれしくもなんともない。
「世の中狭いわね」
と、姉は言ったけど、いまそれを一番実感してるのは弥生だろう。
「夏休みに、僕たち夫婦と従兄弟達と数人で旅行に行こうかなんて言ってるんだけど、弥生ちゃんも行かないかい?
女の子一人に、男二人だから、どうしても女の子があぶれるだろ。
その女の子、いま高一だから多分弥生ちゃんと気も合うと思うし」
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