プロローグ

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そうして今日も食いっぱぐれた。  暗くなってようやく周囲が静かになった。 隠れていた戸棚の隙間から顔を出して外の様子をうかがう。 まぶしい満月の光が注いでいる。 だから、夜なのに部屋の様子はわかった。 テーブルの上のバスケットの中においらの好きな赤い果物があった。 おいらよりも大きいけど、腰からナイフを抜いて削ればおいしく食べられる。 だからヒトが近づいてきても気づかなかったんだ。 「あなた、だれ?」 おいらは驚いて、食い物から飛び降りた。 隠れようとしたけれども時すでに遅し。 「ここで何をしているの?」 冷や汗。 また、とーちゃんに怒られる。 あ、いいのか、もうおいらは勘当されてしまったのだから。 そう思うい始めると、掟を破ってむやみに姿を見せてしまったことをとがめる気持ちはなく、開き直った。
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