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「おいらは、ソル。
悪いけどこいつ、食べさせてもらってたんだ。
腹へっちゃって」
「りんご、食べたいの?」
「りんご?あ、これか。うん」
おいらの隣の果物を見上げて、うなづくと、
女はおいらのためにりんごとやらを切ってくれた。
おいらは、その女をじっと見つめた。
普通だったら、不審に思うはずだ。
なのにこの女は動じず、人を呼ぼうともしない。
友達に接するみたいに、おいらにりんごをむいてくれる。
「どうしたの?食べないの?」
「食べるよ」
おいらがりんごをかじりながら、チラチラと女の顔を見ると女は言った。
「あたしは勝見弥生」
と女はにっこりと笑った。
ポッ。
わあ!顔なんて赤くなってねえよお!
「よろしくね、ソル君」
おいらは正直言ってその女の笑顔に魅了された。
と言ったらかっこいい言い方になるけど、結局のところひとめぼれしてしまったんだ。
おいらの身の上を話したらおいらを家に置いてくれるというから、
完全に掟をやぶってしまった。
弥生はおいらのためにベッドまで用意してくれた。
これがおいらと弥生の出会いだった。
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