1.雑用だらけの文化祭

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だからクラブだって、「部活に行くんだ」って言われるまで知らなかった。 おいらは、文化祭の準備で忙しい写真部の部室の棚の上で様子を見ていた。 写真部は男ばかりなんだ。 弥生の話によると、弥生が入部したときは女も何人かいたらしい。 ただしほとんど幽霊部員ってやつ。 「おい一年。展示ポスターやりなおしとけよ。吉田は?」 「吉田先輩神出鬼没だから今どこにいるんだか…」 「市原は?」 「総務の方です」 「秋山は…買い出しか。勝見は?」 「さっき暗室に何か取りに行くって言ってたけど遅いなあ」 「一年、代わりに行けよー。 ここから暗室までやたらと遠いんだから。 まあいい、帰ってきたら勝見か吉田にポスターの描き方教えてもらえよ」 副部長の南はそう頭ごなしに命令して白黒写真をパネルに貼るために一年を連れて洗面所に行ったようだ。 「南先輩、勝見先輩のことになったら人が変わるんだもんな。好きなのかな」 「まさか、女だったら何でもいいんだよ。」 「勝見先輩は俺の女神だ!!」 一年トリオが好き勝手なことを言っている。 それを聞いているのもばかばかしいのでおいらは窓の隙間から出て暗室の方に行こうとした。 その途中、中庭で弥生の姿を見つて声をかけようとしたが、男に先を越された。 ちょっと悔しい。 そいつは、写真部の部長の大槻。 おいらは結構気に入っている。 「どこ行ってたの?」 「暗室です」 「現像?」 「乾燥していたのをとりに」 「そう」 二人は、別に何かしゃべるでもなく並んで歩いて部室に向かう。 周囲全てが三日後に控えた文化祭のために慌ただしい雰囲気。 活気にあふれていたがが、この二人の空間だけが、ふんわりと浮いているようだ。 弥生が部室に戻ると、高二の吉田がポスター書きを手伝っていた。 絵がうまいらしい。写真も変な写真ばかり撮ってる。 一年は、そのポスターの構図に見とれていた。 「南はどこ行ったかな」 「展示室でレイアウト考えるって言ってましたよ」 「じゃあ、僕も手伝いに行こう。勝見さんも行く?」 「はい」
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