1.雑用だらけの文化祭

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弥生は、教室にいるより部室にいる方が楽しいそうだ。 気分的に、落ち着くらしい。 「クラスと違って押し付けられないし」 と、明かにクラスに対する不満も言った。 なんか、それを聞いた日、初めて弥生の気持ちというものを聞いたような気がした。 おいらは、よくしゃべって、うるさいくらいだから 引っ込み思案だとか、無口だとか、そういう感情を表に出さない奴の気持ちなんて考えたこともなかった。 けれど、何も口をはさまずに弥生の様子を見ていると、 気持ちがわかるような気がした。 多分周りの雰囲気に合わせるんだと思う。 弥生の場合、クラスの女子が結構きついことをポンポン言うから、萎縮する。 だからよけいに、気持ちや考えてることを口に出せなくなって、 たとえ声をかけられても、うまく言葉を出せない。 次に言われることが恐いから。 そうしてまた、誤解を産む。 一方、部室だったら、あまりしゃべらなくても「お高く止まってるみたい」だとか「くらーい」とか言われない。 言葉に詰まっても、変な目や呆れた目で見ない。 だからいつもより多くしゃべることもできる。 おいら、少しは賢くなったかな、なんてね! 人は、しゃべるばかりが偉いんじゃないんだって、いろんな人を見て思った。 部室での弥生は、いつだって聞き役だ。 大槻みたいにたまに的確な相づちをつき、時には意見なんかを言う高度な聞き役ではないけれども、 弥生のようにうなづいて、面白いときは笑ってくれる聞き役という役も人との付き合いの中では大切なんだなあと思う。 クラスの奴らもそんな弥生をわかってあげたらいいのに。 そうしたら、クラスでも、弥生は話す人の目を見て立派な聞き役を努めることができるのに。 なんて、クラスの連中をせめてしまったけど、おいらだって今の今までこのことに気がつかなかった。 それに、弥生だって、少しくらいは勇気を持って声をかけてみたらいいのにな。 弥生のこと、またちょっとわかったけど、おいらはもっともっと弥生のこと知りたい。
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