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――11月中旬。
休日の昼間に鳴り響く救急車のサイレン。
道路にいる車は端により病院への道を作る。
この時、音神 未来(オトガミ ミライ)は彼女とのデートをするために待ち合わせ場所のゲームセンターの前にいた。
ワックスでセットした髪。今日の為に選んだ新調した私服。
今日は幼なじみであり彼女の水無月 麻矢(ミナヅギ マヤ)と交際してから一年の記念日だった。
「麻矢の奴は喜んでくれるかな?」
未来は麻矢の為に選んだラッピングされたプレゼントをポケットへとしまう。
待ち合わせ時間が過ぎてから20分。麻矢の姿は見当たらない。
彼女はしっかり者で今まで時間に遅れたことなんて一度もなかった。
心配になった未来はスマホを取り出し、アドレス帳を開いて麻矢の場所にカーソルを合わせる。
しかし、着信には出ない。何かあったのだろうか? 未来は不安を胸に抱いた。
だがそんな時だった。突然スマホに着信が鳴ったのは。
画面に映し出されたのは音神 遥(オトガミ ハルカ)。母親の名前。
今日はデートだから邪魔するなよと伝えた筈なのに。未来はそう思いながらも着信に出る。
「もしもし母さん? 今日はデートだから電話するなって言ったじゃんか」
不満の声をぶつける未来。だが電話の向こう側の遥の声は慌ただしかった。
『そんなこと言ってる場合じゃないわよ! 落ち着いて聞きなさい。麻矢ちゃんが――』
母の話を聞いた瞬間、未来の頭の中は真っ白になった。
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