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息も絶え絶えになりながら未来はある場所へと着いた。
その場所は都内で一番大きな大学病院。
未来の額に嫌な汗が滲み出る。母から伝えられた言葉。それは麻矢が交通事故に遭い、意識不明の重体として運ばれたことだった。
行きたくないと思いながらも、会いたい気持ちが強く足は前へと踏み出る。
入口には母の姿が見えた。
「母さん!」
「未来! 早く来なさい! 麻矢ちゃんはICU(集中治療室)よ」
母の焦る声が未来の心を焦らせた。
麻矢が集中治療室にいるなんて……。そんなにひどいのか……。
不安に押し潰されそうになる未来の心。だが時は待ってはくれない。
未来はこの病院の最上階にある集中治療室へと一気に駆け上がった。
「……ハァ……ハァ……」
集中治療室の扉を開く未来。
だがその目に映ったのは電子機器を繋いでベッドに眠る恋人、麻矢の姿だった。
「麻矢!」
「み~ちゃん……」
集中治療室の中には白衣を着た医師と、麻矢の両親の姿があった。
未来はベッドに眠る恋人の手を握る。
「良かった……。生きてる」
ピッ、ピッと電子機器の機会音が鳴っていることに未来は安堵していた。
しかし、この未来の一言に対して麻矢の母は両手で顔を隠しうずくまり、父は静かに涙を流した。
そして無情にも医師の言葉が未来の心を壊すことになる……。
「いいえ……。水無月 麻矢さんは……死んでいます」
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