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ロボットが街中にある生活というのは、もっと近代的なものだと思っていたが、実際には自分が生きてきた街の持つ雰囲気はそんなに変わっていなかった。
空を飛ぶ車もまだないし、ボタン一つで料理が出てくるような全自動の仕組みもまだない。
ロボットとはいえ、姿形が完璧に人間と遜色無いものは、まだ歩行などの運動機能を持つものは無く、運動機能に特化しているものは所謂機械剥き出しのものが多い。
しかし、きっと夢物語は自然と現実を帯びるものになるのだろう。
その夢物語を少しだけ先取ろうと、急いでしまえば理想と現実の狭間で不具合が起きるのだ。
ひとしきり外を歩いて、帰る頃になると携帯に着信が入っていた。
中学時代からの気の置けない友人である神崎からだった。
まだ昼前だったので、食事に誘うつもりだったのだろうかと電話を掛け直した。
「もしもし」
「貴志、どこにいるんだ。今お前の家の前に居る。早く戻ってこい」
「どうしたんだよ、急に」
「……いいから早く来い」
「分かった、すぐ行く」
友人のただならぬ様子に冗談とも思えず、急いで自宅へ向かった。
神崎はアパートの玄関に佇んでいた。
俺の姿を確認しても一瞥しただけで、電話での鋭い剣幕は嘘のように静かだった。
「神崎、一体どうしたんだ?」
「どうしたって……お前、覚えてないのか」
「何をだよ」
「……とりあえず、部屋行ってもいいか」
「あぁ、今開ける」
鍵を差し込み、開いた自動ドアの先へ向かう。
部屋を開けると、咲子が玄関にいた。
「咲、出掛けるの?」
「うん。今日点検しに行かなきゃ」
「分かった。気を付けて」
「神崎さん、ゆっくりしていってくださいね」
「……どうも」
神崎は出ていく咲子を目で追いながら、玄関に上がった。
俺がリビングに進もうとすると、腕を掴まれ動きを止められた。
「神崎、さっきから何だ? 何か言いたいことがあれば言えよ」
「別に長居はしない。だからここでいい」
「じゃあ、何で部屋に来たんだ」
「奥さんの様子見ようと思ってな」
「変だぞ、お前何かあったのか?」
「あったよ……今日、追悼式だろ」
「あ……」
抑圧されていた記憶が少し思い出される。
そうか、今日は2年目の追悼式だ。
神崎は悲しむような目線を俺に向けながら話し始めた。
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