道化師は笑う、心を隠して。

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ガチャガチャ 「ねぇアラちゃん…まだ?」 「もう少し待ってくれよ…。」 盗賊にはこんな時の為のスキル、指先の感覚を高めるスキルがあるのだが、あまり必要無いと思ってたのでほぼあげていない。 そのため錠前を開けたりするほどのレベルには達していないのだ。 「つまりほとんど自力ってことだね。」 「そういう…ことだ…よっと。」 ガシャッ。 「開いたぞ。」 「ふぅ…ようやく出れるね。」 そう言って現れたその男は痩身である割に背が高く、話し方からみても少し中性的な雰囲気だった。 そして、スタイリッシュな服装(こういうと聞こえはいいけどつまりはよれよれの服と伸びきったズボンでコーディネートされている)に包まれた彼の顔には星と涙のペイントが施され、ニコニコとした笑顔が印象的だ。 「私の名前は未知可(ミチカ)。 助けてくれてありがとう。」 「名前はさっき説明したよな。 年齢は…年上か?」 「いや、多分同じくらいだよ。 AGではサーカスで修行してたクラウン(道化師)だよ。 こっちでもクラウンからクラスアップしてマジシャンになったんだ~。 ここにはUGでいう10年前くらいに来て、ずっと旅をしてるよ。 それより…さっきの話をしたいんだけど、よした方が良さそうだね。」 「えっ?なんでですか?」 ミチカがそっと指を指す。 そこにはオーガが立っている。 「知ってる?オーガって夫婦で暮らしててメスが住処でじっとしててオスが外に餌を探しにいくの。 で、メスを殺されたオスのオーガは…。」 言われなくてもわかった。あのオーガの心境くらい。 「ゴァァァァァァァァァ!」 完全に怒ってる。
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