恭介さんと僕・1

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「自分に無いものを他人に求めるのは仕方が無い事だと思うんだ。 それと、自分が持ってないものを欲しがる事もね。仕様の無い事だけど」 満面の笑みでそう言う彼の手は、僕の肩を押していた。 「でもね、恭介さん。そういうのは一方的じゃダメなんだと僕は思うよ」 後に手をつき、倒れそうになった体を支える。 「でもさ、よく言うじゃん。嫌よ嫌よも好きの内とかさぁ」 「それはなんか違うんじゃない?」 今の状況には合ってるかもしれないけど。 「それじゃあ突然ですがここで陽介くんに問題です。 正解したらご褒美あげるよ。 『あい』の前には何があるでしょう?」 このやり取りを続けると、いつものように流されてしまいそうな気がする。 早めに切り上げないと。 「それはどういう?」 「え?ご褒美が?」 それはむしろいりません。 「…アルファベットのIの前はHだよね?」 答えたはいいけれど、相変わらず彼の手は僕の肩に置いてあって、なんだか嫌な予感がする。 「はい、正解。よくできましたーじゃぁご褒美を…」 「いりません!」 バランスを崩しながらも肩の手を除けさせる。 彼と僕の歳の差は3つだけれど、10代の3年は大きい。 「えー、じゃあ何か食べたいものとか無い?」 俺はねーと続けようとするのを短い言葉で遮る。 「ない」 「今日暑いよね、アイスとかどう?」 「別に食べたくないよ」 この顔は、何かを企んでたりする顔だ。 「いつも食べてる100円アイスじゃなくて、2、300円のとかでも買ったげるよ?」 …3歳差は、経済力にも差が出る。
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