恭介さんと僕・1

3/4
前へ
/58ページ
次へ
「やー、でも思った以上に陽介くんって安上がりなんだね」 彼の第2目的。僕と一緒に出かける事。 「ってか何もこんな夜中にじゃなくてもいいんじゃない?」 もう既に日付が変わって1時間は経っている。 「こんな時間にこの辺歩いてる兄弟って居ないよ?怪しげだって」 彼と僕は兄弟で、ここは結構田舎だったりする。 「大丈夫だよ。兄弟には見えないから」 …それは余計に怪しくないか? 「ってか弟口説いたりして楽しい?」 毎日毎日、よく飽きないものだなぁと思う。 「楽しいよ?弟だとは思ってないし」 まぁ確かに、彼と僕が一緒に過ごした時間はとても短い。 小学校で5年連続、中学では今の所2年連続でクラスが同じだった幼馴染よりもずっと。 イラッシャイマセと、感情のあまり含まれていない、眠そうな声。 「さて、陽くんはどのアイスがいいのかなー?」 急に、小さな子供に話かけるような口調で言われた。 「…僕はシンプルなのがいいなぁ。お兄ちゃん」 対抗して普段は使わない『お兄ちゃん』を強調してみる。 ……逆効果だったみたいで、恭介さんは顔を手で押さえていた。 「めちゃくちゃ怪しいよ?恭介さん」 そう言うと、手を少しずらして視線を僕に合わせて言った。 「…わんもあぷりーず」 結構気に入ったらしい。 「あ、陽くん。シンプルなのはアイスキャンディーしか無いよ?」 明らかに不自然な笑顔をしてる。 「でも塩アイスはあるからこっちにするよ」 そっちはカップアイスだ。 そういえばこのコンビニは微妙な品揃えだということを忘れていた。 「この間、甘い物は甘くあるべきだとか言ってたじゃん」 「……じゃあ黒ゴマで」 「自分には正直に生きるべきだよ?」 恭介さんは笑顔でアイスキャンディー(ミルク味)をレジに持っていく。 僕の負けだ。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

303人が本棚に入れています
本棚に追加