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sid.晃雅
『会長、どうぞ』
『あ?』
声がして、ぼんやりとした思考が浮上する。
そうか、そうだった。
今は仕事中だったか。
『…あぁ、サンキュ』
『いえ』
温かいコーヒーが、俺の前に出される。
それを出してくれたのは、いつだって副会長の雨谷零次(アマガイレイジ)。
雨谷の入れるコーヒーは、美味くて、いつだって俺にコーヒーを入れるにはこいつだ。
そんなことを考えながら、一口、口をつける。
甘い。
いつもより、少しだけ。
俺は甘いのが得意じゃないが、仕事で疲れた今の体にはちょうどいい甘さだった。
妙にほっとして、席に着いた雨谷を見る。
いつもと変わらない無表情だが、雨谷はたまにすごく可愛く笑う。
特に、俺が何かをやり遂げたときによく笑うのだ。
それが俺は、気に入っている。
…そうだ。
俺はこの笑顔が見たくて、生徒会の仕事をがんばるようになったんだっけ。
こいつが俺の後ろで見届けてくれるから、すべてをあずけられるから…
だから―――
俺、は……
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