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「よ。」
「あ…志島先生」
寮に荷物を取りに来ていた僕は、寮の玄関先で志島先生に声をかけられた。
志島先生というのは、生徒会顧問の先生で、ホストみたいだが相談にも乗ってくれるいい先生だ。
僕は先生と並び、無言で歩きながら、自分の部屋へと向かう。
「生徒会の奴ら…会ってかねぇの。」
「…いいんです。もう、決めたので。」
「……そーか。」
時折話しかけられて、それに答えると沈黙が続いた。
もう、会長に会うつもりはなかった。
いつだって僕の胸にある会長への思い。
それは、会長に会ってしまったら、すべてが溢れだしてしまいそうで、怖かった。
「これから、どうすんだ?」
「留学…しようと思っています。」
「どこに行くんだ」
「…アメリカの、大学に行きたいな、と。」
そうか。
そう言って、先生はうつむいた。
俺との別れを悲しがってくれているように思えて、嬉しい、なんて。
馬鹿だなぁ。
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