君に片思い

sid.志島

「もう、決めたので」

そう言った雨谷の顔は、ひどく悲しそうに見えた。

実を言えば、俺は雨谷が生徒会長である新城晃雅(ｼﾝｼﾞｮｳｺｳｶﾞ)を好きだということを知っていた。

雨谷は無表情が多いが、見る者が見れば、きっと気づいただろう。

突然、雨谷がこの学園をやめると言い出した時

俺は新城と何かあったのだろうと気付いた。

でも、何もしてやれることはなくて。

教師としては、生徒の恋愛事情にまで手出しはできない。
だが、彼らなら大丈夫だろうと、なんとなく思っていたのだ。

俺の目には、新城も雨谷が好きなのだという風に映った。

新城が気づいているかは分からないが、おそらくそうなのだろう。

だが、新城。

気づくのが遅すぎるよ、お前。

俺は雨谷がこのまま去っていくのを、見届けるわけにはいかないと思った。

生徒には、幸せになってもらいたいのだ。

だから、しょうがない。

俺が一肌脱いでやる。

本当に、今回だけ特別に、な。