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「…なぁ、雨谷。戻って来て、くれないか」
「え?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
僕は、あなたから離れるためにこの学園を出ていくというのに。
会長や、生徒会役員のみんなに黙って、この国さえも、出て行こうとしているというのに。
それなのに、こんな僕を引きとめてくれるなんて思いもしなくて。
「俺の、我が儘だってことは分かっている。でも、俺は」
「僕はっ、」
これ以上聞いて居られなくて、会長の言葉を遮った。
「ぼ、くは…ここに居る意味があるんでしょうか…。」
「あ?」
「僕がここに居ても、居なくても…きっとなにも、変わらない。だったら――」
僕なんて、いない方がいいんじゃないでしょうか。
ずっと思っていたことを、思わず訊いてしまった。
答えを聞くのがこんなにも怖いと思っているのに。
訊いてしまったからには、もう戻せないことは分かっているけれど。
「そんなこと、ねぇよ。少なくとも俺は、お前がいたほうがずっといいと思ってる。」
「っ、!」
嬉しいと思った。
少しでも彼に必要とされていることが、とてもうれしかった。
そうやって彼は、僕をもっと深いところへと堕としていく。
やっぱり、このままじゃだめだ。
君とはサヨナラすると決めたから。
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