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sid.晃雅
雨谷を追いかける前。
突然、生徒会顧問の志島が生徒会室にやってきた。
俺は集中できない頭で何とか仕事をやっていたところだったのだが、ドアが開いたときのバァンという音で、何とか掻き集めていたやる気は一気に霧散してしまった。
志島は、入ってきて早々、俺の前までずかずか歩いて来た。
怪訝な顔で見上げたのに、志島は気にした風も無く、少し不機嫌顔で俺に言った。
「雨谷が、部屋の片付けに今学園に来ている。」
その言葉を聞いて、生徒会室に居た者は、志島以外みな、目を見開いておどろいた。
雨谷が、この学園に。
雨谷は、ここに来るだろうか。
「だが、雨谷はお前たちに会う気はないと言っていた。お前たちは、どうするつもりだ。」
ずん、と空気が重くなった気がした。
みんな俯いて、暗い顔になった。
どうする、なんて。
どうしようもないじゃないか。
雨谷が会いたくないというのに、俺たちが会いに行くわけには、いかないじゃないか。
「おい、俺様会長。」
「あ゛?」
少し気にしている呼び名で呼ばれて、俺は眉を寄せた。
見上げた先に居た志島は、俺を睨みつけていた。
「てめぇはどうする。」
「…どうするも、なにも…」「いいのかよ?あいつ、今週中には留学するらしいぜ?」
「なッ…!!!」
留学。
つまり、この日本から出て、海外へ行く、と。
そんなの…そんなのは…
「そんなのないよ!!あんまりだ!」
俺が言うより早く叫んだのは、会計だった。
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