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少年は、まだしまい切れてない命介のカードの内の一枚を指差す。
少年が指差したカードの名は、
『神霊剣士 ソウルブレイダー』。
味方のヒーローカードのパワーの半分を、自分のものにできる能力を持つヒーローだ。
その能力だけを見れば中々強力なカードなのだが、
肝心のソウルブレイダー自身のパワーはヒーローの中でも最弱レベル。
どんな強力ヒーローのパワーを吸収しても、精々中の上ぐらいのパワーにしかならないのだ。
はっきり言って、使いどころが極端に限られる、実用性のないカードである。
「お前、もっと強いレアカード一杯持ってるだろ?
…なぁんでこんな雑魚カード主力にしてんだ?」
「え?だって…かっこいいじゃん。
自分ひとりじゃあ弱いけど、仲間と協力することでパワーアップして悪いやつをやっつけるヒーローってさ。」
「…でもお前、それ使って勝った事ないだろ。」
「……うん。」
図星を突かれてションボリする命介。
命介は、ふと右腕に巻いた腕時計に目をやる。時計の針は、6時を回ろうとしているところだった。
「わっ!もう6時だ!!」
「ゲッ!!ホントだ、すぐ帰らねぇと母ちゃんに怒鳴られちまうよ!!」
急いでカードをカバンにしまう命介達。そのままプレイスペースを飛び出し、
レジを横切ったところで、命介は立ち止まった。
「おいおい、何やってんだよ命介!!」
「ゴメン!!最後にちょっとだけカード買ってくよ!先に行ってて!!」
そう言って命介はカバンから財布を取り出す。財布の中には、100円玉一枚と50円玉が一枚。ちょうど、HEROs'Impactのカード1パック分だ。
今、レジの前には誰もいない。命介はレジカウンターの奥にいるであろう店員を呼んだ。
「すいませーんっ!!島野さーん!!カードくださーい!」
「ハイハーイっ」
パタパタと足音を立てて、レジ奥から女性店員が顔を出した。
島野 秋奈(シマノ シュウナ)。店長の一人娘で、このカードショップ、シューナの名前の由来ともなった女性だ。
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