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―その後、命介は急いで友達と合流し、一緒にそれぞれの家に帰った。
もっとも、家に帰り着いた頃には既に時計は7時前になっており、親にこっぴどく叱られるハメになったが。
【結城家、命介の部屋】
「………ハァ~~っ」
ようやく母の説教から解放された命介は、カバンを部屋の隅に放り、ため息をつきながらベッドに飛び乗った。
部屋の中には、あちらこちらにテレビ番組のヒーローのフィギュアやポスターが並んでいる。
命介がHEROs'Impactに熱中するのには理由があった。
幼稚園に上がる前のころ、命介は両親の仕事の都合で、祖父母のいる東北の田舎町に預けてもらった事がある。
その町の若者達は、大学生ぐらいになると次々と上京して行ってしまうため、
町内に命介と同年代の子供は1人もおらず、
命介は祖父母が畑仕事に出ている間、寂しい時間を過ごさなければならなかった。
その事を心配した祖父母は命介の両親に相談した。
話を聞いた両親は、命介が家の中で1人になっても寂しくならないようにと、
定期的に特撮ヒーロー番組のビデオを東京から祖父母の家に郵便で届けてくれる様になった。
退屈な毎日を送っていた命介が、
テレビの中で、強大な悪に立ち向かう正義のヒーローに強い憧れを抱くようになるのに、さほど時間はかからなかった。
小学生になってからでも、命介のヒーローに対する憧れは変わる事がなかった。
数多くのヒーロー達が登場するカードゲーム、HEROs'Impactに命介が入れ込むのも、ある意味必然だったのである。
命介はベッドに寝転がりながら「明日からはちゃんと時間を確認しながら遊ぶようにしよう」…と考えていると、
カードショップシューナを出る前に買ったパックが、開封せずにカバンの中に突っ込んだままになっている事を思い出した。
「あ、そうだそうだ」
命介は身体を起こすと、放り投げられひっくり返ったカバンの中からパックを取り出す。
「中身は何かな~…?」
命介はワクワクしながらパックを開いた。HEROs'Impactはカード5枚で1パックとなっている。
うち1枚はヒーローカード、残りの4枚はそれぞれ対応するヒーローを強化する補助カードと必殺技カードという内容だ。
補助カード、必殺技カードは命介が対戦で使っていないヒーローのものだった。
まぁ、友達とのトレードに使えるので、いらないとは思わなかったが。
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