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序章
「久しぶりだな、敏」
「おう、大雅。元気だったか?」
「加奈子、遅れてごめん」
「遅いよ、梨愛」
高校卒業して初めてのクラス会。
ホテルを貸しきりにした立食パーティーでテー ブルだけが置かれた会場。
その中央で皿を手にして立つ1組のカップル、 城村敏(しろむらびん)と岸田佳奈子(きしだかな こ)
そんな2人に遅れて到着したもう1組のカップ ル、、石黒大雅(いしぐろたいが)と鮎川梨愛(あ ゆかわりま)が合流した。
端から見れば仲むつまじい恋人同士、仲の良い 親友同士に見えるだろう。
だけどこの4人。それぞれがうちに秘めた思い を抱えて、この3年過ごしてきた。
「仕事はもう慣れた?」
今年短大を卒業して、この春からお堅い銀行に 勤める佳奈子に梨愛が尋ねる。
「全然だよ。新しい口座1つ作るのにも手間 取っちゃってさ、お客さんを待たせてばかり。 いつも怒られてる」
深く息を吐き出す佳奈子は相当疲れが溜まって いるようだ。
「そっかぁ、あたしもなかなか売上延びなくて、昨 日も店長に嫌味言われたんだよね」
高校卒業後すぐに就職した梨愛は、ジュエリー ショップのチーフを努めている。
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