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女同士が仕事の愚痴を話している傍で、
「最近忙しそうだな」
グラス片手に呑気に話す敏は、若干アルコール が回ってきたようだ。
「あぁ、少しずつ仕事量が増えてきたからな。 けどお前は気楽でいいよな。まだあと2年は学 生やってられんだもんな」
そう言ってぐるりと会場を見渡す大雅は、卒業 後すぐに東京に出て、アシスタントしながら腕 を磨き、現在はフリーでプロのカメラマンを やっている。
「なぁ、梨愛。あれ、誰かわかるか?」
ちょうど入口付近でキョロキョロしている1人 の女性。大雅と敏の記憶の中に、その女性は同 級生として存在しない。
「えっ、誰の事?」
振り返り尋ねる梨愛に大雅が指差す方向。その 人物を確認した佳奈子が、梨愛より先に答え た。
「やだ、あれ田中さんじゃない。忘れちゃった の?」
「た、田中?嘘だろ?」
敏はあからさまに驚いて声を張り上げ、隣の大 雅も、
「あれが田中?あの眼鏡おさげの田中だって? マジかよ」
彼女の変わりように開いた口が塞がらなかっ た。それもそのはずた。
当時の彼女は眼鏡をかけて、緩い天然パーマの 髪は2つに分けた三つ編み。
頬から鼻にかけて広範囲にソバカスがあって、 お世辞にも可愛いとは言えなかったのだから。
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