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「たくさん考えたんだな。」
「はい。悩みましたし、家族にもいっぱい相談しました。」
肇さんがふっと笑う。
「強くなったな。」
一瞬、肇さんに会ってからの出来事が脳裏を過る。
『もし、私が肇さんと会っていなかったら?』
きっと私は、逃げてばかりで、勝手に思い込んでばかりの人生だっただろう。
想像するだけでも少し怖い。
何と言おうかと悩んで、そのまま口にする。
「私が頑張れたのって、肇さんのおかげだと思います。」
「ん?」
「肇さんがいなかったら、勉強だってそこそこだし、家族からも逃げていたし、あの事件のことも整理できなかったと思う。だから全部、肇さんのおかげ。」
「そんなことないさ。それに、俺の存在は英実を混乱させただけだと思うけど。」
「ううん、違う!」
熱い想いがこみ上げる。
「・・・肇さんがいたから乗り越えられた。」
肇さんの目を見つめる。
「私、肇さんが好き。」
口を閉じると、部屋には沈黙が降りた。
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