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***(一枚目)***
佐野英実様
お加減、如何でしょうか。
こんなことになり、本当に心から申し訳なく思っています。
あの日の夜。私が告白しようとしていたことを書かせて下さい。
今更と思うかもしれませんが、最後まで読んでもらえたらと願っています。
あの夜に言った様に、私は以前から英実を知っていました。
初めて会ったのは、あの事故の日です。
事務所で事故のことを聞いた私は、すぐに現場に駆けつけました。
そこで、真っ先に目に飛び込んできたのが英実の姿だったのです。
必死に友達を助けようとする姿に、私は衝撃を受けました。
少しの間、私は呆然と英実の姿を見ていました。
それから我に返ると、あなた達に近づいたのです。
大丈夫かと声をかけると、あなたは必死な表情ですがり付いてきました。
タンカが運ばれてくるまでの間も、英実は友達に呼びかけ続けていましたね。
そして運ばれていくのを確認すると、ほっとした様に座り込んでいました。
その足からは大量の血。
そこで初めて、私は英実自身も大怪我をしていることに気がついたのです。
慌てて英実を抱え上げると、あなたは可哀想な位がたがたと震えていました。
そんな時、あなたがつぶやいたのです。
「なんで神様は・・・。」
私は心から驚きました。
自分自身が傷ついているのに、この子は周囲のことを気にかけるのかと。
服越しに伝わる、あなたの頼りない体温が愛おしく思えました。
今思えば、その時、私はあなたに恋をしたのだと思います。
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