10日目(下)

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***(二枚目)*** しかし、その後しばらくの間は、英実のことを思い出すことはありませんでした。 それ所ではなかった、というのが本音です。 次に英実のことをはっきりと思い出したのは、一年後のことでした。 偶然、英実のことを見かけたのです。 あなたは一人歩いていました。 その表情は暗く、どこか不安定な印象を受けました。 私はとても気になりました。 しかし立場上声をかけるのは憚られ、その時はただ見ていただけでした。 その後も、いろいろな場所であなたのことを見かけました。 その度に英実の表情はどんどん暗くなっていくのが、不安で仕方ありませんでした。 そしてあの秋の日。 私はコンビニの前に座り込む英実を見た瞬間、一つの賭けに出ました。 もしかしたら、英実は私のことを知らないのでは、と。 ですから、わざとゆっくり英実の前を通り過ぎました。 あなたの視線を感じましたが、それは敵意があるものとは感じられませんでした。 私は戸惑いました。 英実に接触することで、どんな結果を招くか、十分理解していたからです。 しかし、あなたの暗い目が脳裏を離れなかった。 一晩考え抜いて、次の日行動に移しました。 それが、声をかけた日のことです。 その後のことは、英実も知っての通りです。 英実と一緒にいると、楽しい反面、いつでも私の中で『近付き過ぎてはいけない。』と警鐘が鳴っていました。 あなたと過ごす時間が長くなればなるほど、一緒にいる時間が貴重に思える様になりました。 手放し難かった。 こんな年上のおじさんが、何を考えているのかと、英実は思うかもしれませんね。 私自身、自分の気持ちに戸惑いました。 しかしあなたを大事に、愛おしく思う気持ちは強くなる一方でした。 あと少し、あと数日。 そんな風にずるずるとここまで来てしまった。 そんな自分勝手な願いが、あなたを最終的に傷つけてしまったのだと思います。
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