梅花の頃

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「まあね・・・。それより受験はどう?」 途端に泉がにっこり笑う。 「実は・・・、滑り止めの大学に受かりましたー!」 「おめでとう!!」 「良かったね。」 口々に祝福を言うと、泉が嬉しそうに頬を掻く。 「1個受かっただけだし、第一志望校じゃないんだけど。それでもホッとした。」 「うん、泉は頑張ってたもんね。将来は敏腕弁護士かあ。」 泉が裁判所にいる姿を想像する。 きっと泉は、依頼者を一生懸命守る、熱い弁護士になるに違いない。 「でも本命はこれから受験なの。頑張らなきゃ。」 目をキラキラさせる泉に、静香がやわらかく微笑む。 「私も負けてられないね。将来は学校の先生になるんだから。」 「静香の将来も、何か想像できるよね。」 「ふふ。だと嬉しいな。」 静香と泉が顔を見合わせて笑い、そして視線を英実に向ける。 「英実の将来は、ちょっと予想外だったね。」 「うーん。私自身そうだもん。」 「やっぱり、肇さんの影響力は大きかったかあ。」 にやにやと泉が指摘する。 途端に、勝手に頬が熱くなってしまった。 静香がコップを置いて、英実を見つめてくる。 「それで最近は?肇さんと会っているの?」 「ううん。」 「連絡は?」 ちょっと口ごもる。 やっぱり友達にこういう話をするのは恥ずかしい。 「・・・手紙をやり取りしてる。」 静香が面白そうに顔を傾げる。 「ずいぶんと、古風ね。」 「あれ以来、なんとなくはまっちゃって。」 病気になった時に、たくさんの人からもらったメモやノート。 それを見返している内に、文章を書く・残すということに英実ははまってしまったのだ。 「どんなやり取りしているの?」 英実は最近やりとりした内容を思い出して、唸る。
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