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家に帰ると、食卓の上に手紙が何通か置いてあった。
一番上に置いてあるのは、山本さんからの葉書だった。
画面いっぱいに可愛い子犬の写真。
その下に小さな字で、『犬を飼い始めました。良かったらまたご家族で遊びに来てください。』と書かれている。
「かわいい!」
柴犬だろうか。
くるんと丸まった尻尾と、まん丸の目。
「いいなあ。」
犬を飼ったことがない英実にとっては、本当にうらやましいことだった。
声を聞きつけて、兄がリビングから顔を覗かせる。
「あー、その子かわいいよな。」
「うん。会ってみたい。」
「お母さんがまた行こうかなって言ってたよ。」
苦笑する兄につられて、英実も笑ってしまう。
「本当に仲良しになったよね。この間も大きな荷物送っていたもんね。」
「まあ、良かったよな。」
笑いながら、英実は他の手紙もチェックする。
一番下の封筒をまで来たとき、英実の手が止まった。
兄がくすくす笑いながら声をかける。
「見つけちゃったか。」
「これってもしかして・・・?」
「足長おじさんからの返事みたいだよ。」
「!!」
慌てて封を切る。
内容を流し読んで、英実は顔を輝かせた。
「協力してくれるって!」
「良かったな。」
兄もにこにこ笑って、英実の頭を撫でてくれる。
「あとは合否を待つだけか?」
「うん・・・。もう落ちたらな落ちたで早く連絡くれればいいのに・・・。」
思わず弱音を吐くと、兄がこつりと額を叩く。
「めったなこと言うもんじゃないぞ。」
「はあい。」
やるべきことは全てやった。
あとは合否を待つだけ。
3年生の冬は短い様でいて、とても長い。
英実は手紙を大事にポケットに入れると、勉強の為に自分の部屋に向う。
その勉強は、4月以降きっと役立つはずと信じて・・・。
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