梅花の頃

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◆◆◆ 家に帰ると、食卓の上に手紙が何通か置いてあった。 一番上に置いてあるのは、山本さんからの葉書だった。 画面いっぱいに可愛い子犬の写真。 その下に小さな字で、『犬を飼い始めました。良かったらまたご家族で遊びに来てください。』と書かれている。 「かわいい!」 柴犬だろうか。 くるんと丸まった尻尾と、まん丸の目。 「いいなあ。」 犬を飼ったことがない英実にとっては、本当にうらやましいことだった。 声を聞きつけて、兄がリビングから顔を覗かせる。 「あー、その子かわいいよな。」 「うん。会ってみたい。」 「お母さんがまた行こうかなって言ってたよ。」 苦笑する兄につられて、英実も笑ってしまう。 「本当に仲良しになったよね。この間も大きな荷物送っていたもんね。」 「まあ、良かったよな。」 笑いながら、英実は他の手紙もチェックする。 一番下の封筒をまで来たとき、英実の手が止まった。 兄がくすくす笑いながら声をかける。 「見つけちゃったか。」 「これってもしかして・・・?」 「足長おじさんからの返事みたいだよ。」 「!!」 慌てて封を切る。 内容を流し読んで、英実は顔を輝かせた。 「協力してくれるって!」 「良かったな。」 兄もにこにこ笑って、英実の頭を撫でてくれる。 「あとは合否を待つだけか?」 「うん・・・。もう落ちたらな落ちたで早く連絡くれればいいのに・・・。」 思わず弱音を吐くと、兄がこつりと額を叩く。 「めったなこと言うもんじゃないぞ。」 「はあい。」 やるべきことは全てやった。 あとは合否を待つだけ。 3年生の冬は短い様でいて、とても長い。 英実は手紙を大事にポケットに入れると、勉強の為に自分の部屋に向う。 その勉強は、4月以降きっと役立つはずと信じて・・・。
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