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2人が話している内容を、当然英実は知る由もなく・・・。
英実は門を抜けると、そのまま大通りに向かう。
イギリス、特にロンドンは様々な人種の人達が住んでいる。
アフリカ系の女の子達を抜いた所で、携帯が鳴った。
「はい。」
『英実。授業は終わったか?』
携帯から響く、肇さんの声。
途端に胸が弾む。
「うん。今駅に向かってる。」
『どこら辺?』
「えっと・・・。」
近くにある目星い建物の名前を言う。
『迎えに行く。5分、そこで待っておいて。』
「ありがとう。」
『俺が行くまでナンパされるなよ?』
最後は笑い混じりの声。
「ちょっと!」
英実が文句を言う間もなく、電話が切れてしまった。
それからきっかり5分後。
英実の目の前に一台の車が停る。
「英実。乗って。」
「え・・・。はい!」
慌てて助手席に乗り込むと、肇さんは慣れた動作でアクセルを踏んだ。
「どうしたの?この車。」
「今日はもう授業ないんだろう?せっかくだから郊外に行こうと思ってさ。英実はイギリスの田舎に行ったことないって言ってたし。」
「連れて行ってくれるの!?」
「イギリスの醍醐味は田舎だからな。」
肇さんがふっと笑う。
その笑顔を見て、英実はちょっとだけ頬が熱くなる。
肇さんは3日前からイギリスに来ているけど、とてもロンドンの街が似合っていた。
今日も、サングラスと、シンプルなシャツ姿の肇さんは、正直とっても格好良い。
付き合って2年になるけど、今でもドキドキしてしまう。
そして少しだけ不安になる。
本当に私でいいのかなって・・・。
「どうした?」
いつの間にか肇さんを見つめていたらしい。
英実はドギマギしながら視線を外す。
「何でもない!」
「そ?」
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