奴隷

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 今の時代、奴隷を持たない家は一軒もなかった。いや、一人としていないと言った方が正しいかもしれない。それほどまでに、人々の間に奴隷文化が浸透していた。  奴隷を聞けば、人権主義者などは怪訝な顔をすることだろう。しかし、この奴隷達に、人権という言葉は通用しなかった。何故なら、彼らは人間でないのだから。  奴隷が、いつ現れたのか、あまりにも前のことなので、その日を覚えている人はいなかった。  ある日のことだ。彼らは円盤に乗ってやってきた。当初、誰もが宇宙人との交流ができると喜んでいたものだ。だが、円盤から姿を現した彼らを見て、失礼ながら落胆した。それというのも、彼らは貧弱そうで、とても知的な生命体には見えなかったからだ。  それでも、彼らは宇宙人だ。地球の技術では未だ、為し得ない円盤を造り上げた生物だ。雑に扱う訳にはいかなかった。  それに、彼らは何故か激しく衰弱していた。円盤の中には、何百人という宇宙人がいて状態は、全員、同じだった。直ちに、彼らは国立の病院へと運ばれ、そこで入院することとなった。  地球の薬が効くのかという不安はあったが、幸いなことに薬は有効だったらしく、宇宙人は全員、快調した。ある程度、体力が回復したところで、地球の代表者は聞く。 「いったい、どのような目的で地球までいらっしゃったのですか?」  誰もが不思議に思っていたことだ。侵略に来た割りには、あまりにも衰弱していた。交流が目的だとしても、人数が多すぎる。  代表者に質問され、宇宙人は恥ずかしそうな顔をして答えた。 「私達は、かつて英知を極めた星で生活していました。しかし、あまりにも発達しすぎた文明は私達を堕落させてしまい、長い年月をかけて築き上げた技術や知識を全て忘却の彼方に消え去ってしまいました。このままでは、まずいと思いましたが、退化した私達にはどうすることもできませんでした。そこで、最後の手段として、まだ動く円盤に乗って、ここまできったのです。どうか、お願いします。奴隷でも構いませんので、どうか、私達を保護してください。このままでは、私達は滅んでしまいます。生き残れるのならば、何だってしますから!」
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