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恵は不敵な笑みを浮かべるとベッドに腰掛け布団が盛り上がっている場所に唇を寄せる。
そして思いっきり甘い声で、わざとらしく声を上げた。
「な~んや~。つまら~ん。せっかくいつもより早う起きたから、今日はギリギリまで”夜”の続きでもと思ってんけど……起きてくれんと残念やけど無理やなぁ~」
その途端、盛り上がっていた布団の中から、素早い早さで腕が伸びてきたかと思うと、ベッドの中に引きずり込まれる。
(はいっ。いっちょ上がりやっ)
そんな事を思い心の中でほくそ笑むと、自分を見下ろす男に微笑んで見せた。
「おはようさん」
三浦佑-みうらたすく-(29)は、まだ開けきれない目を細めながら自分の下にいる恵に笑みを浮かべる。
「……おはよ」
擦れた低音ボイスで、とりあえず朝の挨拶を済ますと、当たり前のように唇を寄せていく。
その途端、恵は素早く佑を躱すと布団を剥ぎ取りベッドから飛び降りた。
「起きとるんやったらさっさと出てこんかいっ」
突然、目の前の恵がいなくなり佑は枕に顔を突っ伏すと、慌てて起き上がり振り返った。
「ちょっと待てってっ?」
佑の呼びかけにベッドルームを出ようとしていた恵は、面倒くさそうな顔をしながら振り返る。
「なんやね~ん? 朝は僕忙しいねんて」
「だってっ……続きって……?」
戸惑った様子でベッドの上で正座している佑に向かって、恵は片方の口角を上げて見せた。
「なんの続きや? 夢でも見たんちゃうん、自分」
「えっ?」
「さっさと服着てご飯食べてやぁ~。いつまで真っ裸でおんねん」
さっさとベッドルームを出て行った恵の後ろ姿を恨めしそうに見詰めると、佑はベッドの上で胡座をかき、寝癖だらけの頭を乱暴に掻きむしる。
「……騙された」
「それと」
「?」
ドアから顔を覗かせた恵は、不思議そうに自分を見詰めている佑の下半身を一瞥すると、一言言い放つ。
「勃ってんで」
「?!」
慌てて両手で前を隠した佑に、ほくそ笑むとわざと声を上げながらベッドルームを後にした。
「朝やからかなぁ~? それとも、なんか如何わしいことでも想像しとったんかなぁ~?」
「…………」
残された佑は、ばつが悪そうな顔をすると、おもむろに枕を掴み、恵に指摘された前を隠した。
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