第一章 僕とオトンの秘密の関係

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 ネクタイを片手に不機嫌な顔をしながら食卓のテーブルについた佑に、恵はコーヒーカップを差し出す。 「は~い、コーヒー」 「…………」 何かを訴えかけるように見上げてきた佑と視線が重なると恵は苦笑いした。 「なんやねん、そのぶっちょう面? イケメンが台無しやね」 「だってっ……」 不満そうにコーヒーを啜る佑からネクタイを受け取ると、佑の首に巻き付ける。 「佑がアカンのやで? もうちょい早う起きとったらギリギリにならんで済むんやから」  清々しい表情でネクタイを結んでいる恵を見詰めながら、佑は不思議そうに首を傾げた。 「なんでお前はそんなに元気なんだ?」 「なんでって……人間は、おてんとさんと一緒に起きる習性あんねんで? 佑こそなんで夜行性なんか不思議やわ」 「そうじゃなくて、俺と同じ生活スタイルなのに何でお前は朝に強いんだろうなって」 「若いからちゃう?」 「嫌味か?」 「やって、事実やもん」 恵の言葉に、佑は何かを考え込むように眉間に皺を寄せる。 「……だからかな」 「なにがや?」 「前から思ってたんだけど……お前、辛くないの?」 「だからなにが?」 怪訝な表情を浮かべ視線を向けてきた恵に手を伸ばすと、腰の辺りを撫でた。 「腰」 「なっ?!」 その途端、恵は真っ赤に顔を染め上げると佑の手を払い除け身体を引く。 だが、佑は何でもない事のように言葉を続けた。 「俺は結構、辛いけど、お前は?」 「……っ……んなことっ……聞くなやっ!」 「歳の差はあるかもしれないけど、俺よりもお前の方が負担が……」  佑の話しにとうとう耐えられなくなった恵は、結びかけたネクタイを乱暴に引っ張ると声を上げた。 「あー!! もう黙っときっ。朝からなに卑猥な会話しようとしてんねんっ?!」  顔を赤く染めたまま、必死でネクタイを結ぶ事に集中しようとしている恵に、相変わらず佑は平然と問いかける。 「……卑猥って……だってそうだろ?」 「知らんわっ。人の腰、心配しとる暇あったら低血圧なんとかせいやっ」
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