1042人が本棚に入れています
本棚に追加
佑は手を伸ばし恵の猫っ毛の髪を梳く。
「髪伸びたな? だから余計に可愛く見えるんじゃないか?」
目を細めた佑を一瞥すると、恵は言いづらそうに言葉を口にした。
「そろそろ切りたい思うてるんやけど……」
「けど?」
聞き返してきた佑を上目遣いで見詰める。
「……切っても……ええ?」
「えっ? 俺に聞いてる?」
驚いたように目を丸くする佑に、恵は恥ずかしそうに俯いた。
「……他に誰おんねん」
わざわざ自分にお伺いを立てる恵に、佑は笑いながら問いかける。
「髪くらい自分でいつ切るか決めればいいのに。なんでわざわざ聞くんだ?」
「……やって……佑、僕の髪触るの好きやんか? 長いのもよう似合おうてるって喜んどるし……やから……」
「…………」
思わぬ恵の言葉に、佑は硬直する。
居たたまれなくなった恵は堪らず声を上げた。
「……なっ、なっんやねんなっ? 黙んなやっ!」
「……恵」
囁くように自分の名を呼ぶ佑に、恵はおずおずと視線を向ける。
「……なにぃ?」
佑は顔を思いっきり緩ませると、恵を抱き寄せ腰に両手を回し擦り寄った。
「お前可愛すぎやっ」
「ちょっとっ?」
「そんなんで悩んどったんかぁ~? なんて可愛いねんっ」
加減なしに抱きついてくる佑に、恵は困った顔をしながら声を上げる。
「引っ付くなやっ? ネクタイ結ばれへんやんっ」
「お前がアカンのやで~? 可愛いこと言うから」
「さっきから可愛い煩いねんっ。男なんやから、そんなん言われても嬉しゅうないわっ」
最初のコメントを投稿しよう!