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「もう少し兄貴と話してれば良かったのに」
「……なんで?」
「だって、会うの久しぶりだろ」
「哉太とだって久しぶりだよ」
「そうだけど」
続いていた会話が途切れて2人分の足音が小さく鳴っていた。
「私は哉太に会いたかったんだよ」
「……」
前方から来た車のライトがやけに眩しい。
え
なに?
「哉太のステージで演奏するの
夢だったの
だから今日あの場所で音が鳴った瞬間に
全身の毛が逆立ったみたいに
凄く興奮して
要のサックスと哉太のドラムに合わせて
演奏出来て本当に夢見てるみたいで
幸せだった」
街灯の光を受けて輝く瞳が俺を見ている。
大きな瞳がこちらを見ている。
「哉太の顔が見れて
嬉しいんだよ」
「……ユウ、酔ってる?」
「なんで?」
「だって言動おかしいよ」
そんな風に言われたら舞い上がるよ
勘違いして、喜んじゃうよ。
「お酒ほとんど飲めなかった」
「……」
「哉太」
「ユウは、兄貴が好きなんじゃないの?」
「……」
「せっかく会えたのに俺といていいの?」
「……いつの話を言ってるの?」
「いつって、音楽室の前で俺に言ったじゃん」
「だからそれ、何年前の話?
確かに要の事は良いなと思った時もあったけど
あれは憧れみたいなもので
恋とは違ったんだよ」
「俺は、何年前でも何年経ってても
好きな人は変わらないよ」
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