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「……は?」
顔を上げた。
「哉太、きっと私の事なんとも思ってないんだろうな、って。
ずっと連絡もくれなかったし」
「……連絡は
しなかったけど
ユウだってしてこなかったじゃん」
邪魔したくなかったから、成功するまではと思ってた。
「最初は本当に最悪で、こんな失礼な男の子いないなって思ったけど
ちょっと不器用なだけで本当は優しいし
弾けなくなったピアノに
触れられる様になったのも
それに立ち向かう勇気も
人前で演奏する楽しさを知れたのも
哉太のおかげだと思ってる」
「俺だけじゃないよ」
「わかってる、でも
私の背中を押してくれたのは
哉太だよ。
自転車で河原まで連れて行ってくれたし
金城先生の所に一緒に行ってくれたし
要が怪我した時ずっと私の手を握ってくれてた」
「……」
「日本を離れる前から私、哉太の事が好きだよ」
「……」
「哉太には年数的に敵わないけど
これでも結構っ……」
身体が勝手に動いてユウを抱きしめてた。
「……哉太?」
「……泣きそう」
好きな人にそんな情けない事しか言えないけど
ユウは小さく笑って俺の頭を撫でた。
「ずっと好きでいてくれてありがとう」
ユウの声が耳元で聞こえた。
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