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本当、先月の正月明けの昼時は忙しかった。
何組の客が来たのだろう。
ちょっとしたホテルの宴会場ぐらいあるラウンジが常に満席だった。
ラウンジの裏の厨房は、まるで戦場みたいな騒ぎだった。
営業課の人が顧客たちを連れてラウンジに入ると、席を案内するのは、フロアリーダーの田沢理香の役目だ。
コンパニオンはすぐに人数分のコップに水を注ぎ、トレイに乗せて運ぶ。
ラウンジが一番忙しいのは、昼時だ。
午前中、提携する仕出し料理屋から、松花堂弁当と大きな鍋に入った味噌汁が届くと、ラウンジの裏の厨房にある保温器で保管される。
それをすずたちはワゴンやトレイに乗せ提供する。
黒い塗りの箱に入った弁当は、意外に重い。
団体客に手早く弁当を配るのは、結構大変な作業だ。
顧客によっては食事の際、アルコールをリクエストする場合もある。
ラウンジでは、コーヒーや紅茶、ジュース類の他、ビールや日本酒、ウイスキーが準備されていた。
どんなに忙しくても、ラウンジは2時過ぎには落ち着く。
裏の厨房ですずたちが洗うのは、コーヒーカップ、グラスやスプーンなど喫茶に使ったものだけだ。
茶碗や弁当の容器は汚れたまま、仕出し屋に戻される。
昼飯のピーク時を過ぎると、あとは商談や打ち合わせの為に喫茶店代わりに使われる。
すずたちは、社員の合図でトレイを持ち、飲み物のオーダーを取りに行く。
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