‡プロローグ‡

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見た目は古いが、しっかりした作りになっているように思う。 橋を支えるロープも、専用の特注品なのか頑丈そうな太いものが使われていた。 全長は約八十メートル、といったところか。 その橋の上を、車が走る。 「うわ……、高ぁ……」 窓の外を窺いながら桜が横で呻く。 つられて俺も僅かに身を乗り出して窓に顔を近づけてみた。 「二十メートルくらいはあるか。万が一落ちたら一発で決まりだな」 「しれっとした顔で不吉なこと言わないでよ、馬鹿」 見たままの感想を言っただけなのに、馬鹿呼ばわりされてしまった。 「でも、由奈さんの言う通り丈夫なのは間違いないみたいだね。この人数を乗せた車が走ってもビクともしないよ」 「でしょ? 普段から利用してるわたしが言うんだから当然」 部長の言葉に、由奈さんは満足気に笑ってみせる。 「だいたい、村に通じる唯一の道だから、すぐ壊れるような設計はさすがにしてないはずよ」 この橋が村を出入りする唯一の手段ならば、橋の補強工事等をする場合村人は必然的に閉じ込められてしまうということか。
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