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「で、普段は職場で何してるのかって聞いたら、さや姉のやつ趣味で小説書いて遊んでるんだと」
軽く右手を挙げて、意識的におどけた素振りをしてみせる。
「小説? 仕事中に?」
小首を傾げて聞き返す桜へ、笑いながら頷く。
「ああ。暇すぎてあまりにもやることないってぼやいてた」
「ふぅん。殺人事件解決するくらいなのに人気ないのかな、その事務所。でも、紗耶香さんの書く小説ってどんな内容なんだろ。ちょっと興味あるかも」
「俺、少しだけ読ませてもらったけど、あれは桜は読まない方が良いと思うぞ」
「どうして?」
「何て言えば良いのか……、さや姉のやつ主人公に俺の名前つけてやがってさ。桜も登場するんだよ」
言いながら、俺は桜から自分の太ももへと視線を逸らす。
「……あたしが物語に登場してるの?」
「ああ。記憶を無くした悪魔の役で……」
「え? 何それ?」
視線を逸らしたままポツリと呟いた俺の言葉に、あからさまに怪訝そうな反応を見せる桜。
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