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「何であたしが悪魔なの? そんなキャラじゃないのに……」
「いや、その悪魔に振り回される役の俺もなかなかに悲惨だったんだが……」
あんな小説もどき、廃棄するべきだったか。
今更ながらに後悔するも、もはやどうしようもないが。
「ほら、あれが目的地の村だよ」
桜と二人渋い表情で並んでいると、由奈さんの快活な声が思考を現実に戻した。
車を停車させ、由奈さんが運転席を降りる。
つられるようにして、俺たちも後に続いた。
降りた場所は、まだ山道の途中だった。
ただ、この周辺は道路脇の木々が伐採されており、日当たりは良い。
そして、その伐採され切株だけになってしまった木々の向こう、開けた景色の先に小さな集落のようなものがあるのがはっきりと見ることができた。
田んぼの緑がいくつも連なり、風が吹く度に光を反射した水が所々で眩しく輝いている。
点在するように建てられている民家はそのほとんどが古い外装をしており、近代的な建築物は見当たらない。
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