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「わたしがこの村に来るきっかけになったのが、この藤美荘だからね。たまたま従業員を募集してるのを職安で見つけてさ、定員一名だったから急いで面接希望したのよ」
「わざわざこんな場所で探さなくても良かったんじゃないですか?」
余程就職先に困っていたのかどうかは知らないが、こんな辺鄙な村にまで仕事を求めしかも即決で面接を希望するなど、俺の感覚ではありえない。
しかしそんな俺の疑問に、由奈さんはにんまりとしながら首を振った。
「逆よ、逆。こんな田舎だからこそ、好きで選んだの。わたし、ずっと田舎暮らしに憧れててね。もうこれは絶好のチャンスだって思って。それに……」
そこで一度言葉を切り、勿体ぶるように間を空ける。
「ここの仕事、楽な上にかなりお給料良いんだよね。村長さんが経営者なんだけど、凄いお金持ちみたいでさ。噂じゃ億単位の財があるとか何とか」
「億!?」
すっとんきょうな声を出したのは桜だ。
「うん、この村の敷地ほとんどが村長の持ち物らしいし、まぁかなりの富豪なのは確かね。思いつきで学校を旅館にして経営するとか、ちょっと酔狂なところもあるけど」
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