第一章:隔離された村

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話をしている間にも、車は藤美荘への距離を縮めていく。 元は校門であったはずの場所には、学校名が外され紫の文字で藤美荘と書かれた看板が付けられていた。 「ここは元々、藤美小学校って名前だったの。少子化や過疎化が原因で廃校になって、今いる村の子供たちはみんな町の学校まで通ってる状態」 元は教職員用の駐車場だったであろう場所に車を入れながら、由奈さんは藤美荘について簡単な説明をしてくれる。 「基本的に従業員はわたしの他にあと二人。それ以外は梅木家の人たちがメインで働いてる感じかな」 「梅木家?」 初めて耳にする名前に、俺は聞き返す。 「あ、梅木家っていうのは村長さんの家族のこと。こんな村じゃ働き手なんかまともに集まらない。かと言って、仮に集まったとしてもお客さん自体がほとんど来ないから、逆に人手が余る。そういうややこしい事情を抱えてるから、いっそのこと最低限の労働力だけ確保して、足りない部分は自分たち身内で何とかしようって考えみたい」 「確かに、農業とかならまだしも、サービス業が流行るような環境じゃとてもないよね」
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