第一章:隔離された村

7/84
前へ
/532ページ
次へ
藤美荘のすぐ裏手は山があり、深い緑がこんもりと広がっている。 渡された荷物を肩にかけながら裏山を見上げていると、ふいに正面玄関の方から女性の声が聞こえてきた。 「おかえりなさい、由奈さん。その子たちがお客さんね?」 振り向くと、背の高い女性がこちらに歩いてくるところだった。 三十代後半くらいに見える。 健康的に引き締まった体躯に、後ろで一つに纏められた髪。 こちらを見て笑うその表情からは、人当たりの良さが滲み出ているように感じた。 「こんな若い子たちが泊まりに来るなんて初めて。何も無い所だけど、ゆっくりしていってね」 俺たちの側まで来て立ち止まると、その女性は丁寧な発音でそう言ってきた。 「どうも、今日から四日間お世話になります。僕はミスオカ研部長の野島 孝介と言います」 部長が代表するように口を開き、俺たちメンバーを紹介する。 「まぁ、それじゃあ貴方が由奈さんの従弟なのね。言われてみればどことなく似てるかも」 全員の紹介が済むと、女性は由奈さんと部長を見比べながらクスリと笑った。
/532ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1042人が本棚に入れています
本棚に追加