1042人が本棚に入れています
本棚に追加
それから、俺たち三人のメンバーを順番に見渡して、促すように宿の入り口へと腕を差し出した。
「みんなも、ずっと車の中にいて疲れたでしょう? 部屋はもう用意してあるから、どうぞ」
「ありがとうございます。ええと……」
「ああ、わたしは梅木 碧(うめき みどり)です。一応、ここの従業員みたいなものだから、何か困ったことがあったら遠慮なく声をかけてね」
呼び名に困り言葉を詰まらせた部長に、女性、梅木 碧はそう告げた。
「梅木……ってことは、村長さんのご家族ですか?」
先程聞いた話を思い出したのだろう。
桜が訊ねる。
「ええ。わたしは村長の義理の娘だけど。ほら、あそこに建ってるのがその村長の家よ」
答えながら碧さんが指差したのは、藤美荘の敷地のすぐ隣に建てられた立派な屋敷だった。
由緒正しい日本家屋、といった感じだろうか。
平屋だが、かなり大きな家だ。
敷地面積は田んぼ四つ分は余裕であるように思う。
屋根の両端には、豪奢な鬼瓦が見えた。
最初のコメントを投稿しよう!