第一章:隔離された村

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屋敷の周囲は塀に囲まれているめ全体をくまなく見ることはできないが、庭の広さもかなりあるようだ。 「さすが村長の家というか、凄いですね」 半ば見とれるように屋敷を眺めながら、桜は感心したように呟く。 「うん、わたしも嫁いだばかりの頃は凄い所に来ちゃったなって思ったりしてたわ。今は慣れて、むしろ掃除が大変で困ってるんだけど」 入り口へ案内するため歩きだす碧さんに続きながら、俺は携帯を開いて時間を確かめる。 時刻は、午後十二時半を少し過ぎたあたり。 「あ……」 それを確認した瞬間、携帯の電波が入っていないことに気がついた。 「ん? どうしたの、雄治」 「ここ、携帯使えないみたいだぜ」 首を向けてくる桜に、俺は携帯画面を見せる。 「え、嘘……。うわぁ、ホントだぁ。電波届いてないじゃん」 慌てて自分の携帯も確かめる桜だったが、結果は同じだったようだ。 信じられないというように顔をしかめている。 「あ、ごめん。言い忘れてたけど、この辺り一帯は携帯電話は使えないから諦めてね」
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