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うっかりしてましたと言わんばかりに、由奈さんが手を合わせて言ってくる。
「どうしても携帯使いたいって時は、もっと下った場所まで行かないと無理だね。まぁ、宿の固定電話とかは普通に使えるから、どうしようもないわけじゃないけど。とりあえずメールとかは諦めてね」
「そんなぁ……」
「慣れないと不便に感じるかもしれないけど、実際にこういう環境で生活すると携帯なんか無くても意外と困らないものだって思うわよ」
しょぼくれる桜へ、碧さんが諭すように声をかける。
「ここにいる間くらいは、そういう普段の習慣から離れて自然を満喫してほしいな。都会とは違う発見が沢山できるから」
宿の入り口へ到着する。
元は学校というだけあって、その面影は残り過ぎているくらいに残っている。
しかし、最低限の改装はしているようで床に敷かれた赤い絨毯や、玄関の真正面に飾られた藤の木を模したレプリカ、壁にかけられた誰が描いたかわからない田舎風景の絵画など、旅館らしく演出しようとする努力は見受けられた。
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