第一章:隔離された村

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通路同様、赤い絨毯の敷かれた階段を上り、二階へ足を運ぶ。 よくよく壁を眺めてみると、白ではなくて薄紫に塗られていることに気付いた。 たぶん、藤の花をイメージしているのかもしれない。 「あ、そうだ。ねぇみんな」 最後尾を蓮田と並びながら歩いていた由奈さんが、ふいに口を開いた。 「何?」 歩きながら身体を捻り、部長が返事をする。 「ここさ、夜になったらなるべく部屋の窓開けたりしない方が良いよ。ガンガン虫入ってくるから」 「え? やだ、何ですかそれ」 由奈さんの言葉に不快感を隠そうともせず、桜が嫌そうな声をあげる。 「たまにね、拳サイズの蛾とか入ってくるから本気で気をつけて」 しかめっ面になる桜を面白そうに見つめて、由奈さんはサラリと不気味なことを告げた。 「あぁ、確かにたまに出るよね。あれはあたし手に負えないわ。羽音とかすごい気持ち悪いし、思い出すと身体中痒くなってきちゃうくらいだよ」 両腕を擦りながら、流森さんが話に交ざる。 「いや、ちょっと二人ともやめてくださいよ。あたし虫とか苦手なんですから」
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