第一章:隔離された村

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当然というか、小学校時代の備品はどこにもない。 正面にあったであろう黒板も撤去され、今は新に塗り直された壁があるだけ。 部屋の真ん中には長テーブルと座椅子が置かれ、お茶請けも用意されていた。 「へぇ、二人で使うにはちょっとスペースが広いけど、寝泊まりする分には悪くないね。テレビも付いてるし、値段を考えたらリーズナブルな方じゃない?」 肩にかけていたバッグを足元に置き、部長は室内に飾られた小物類を眺めて回る。 「……まぁ、そうですね。山奥のお寺とかで雑魚寝させられるよりはマシです」 窓の外に見える葉桜とその向こうの田園風景を一瞥して答えると、桜は座椅子へと座り込む。 「こっち、あたしたち使います。部長たちは隣の部屋使ってください」 移動が面倒なのだろう。 背もたれにのし掛かりつつ告げる桜に、俺と部長は頷いた。 「あ、ここエアコンとかあったんすね」 視線を上げた先に近代的な機器を発見し、俺は隣に立つ由奈さんに声をかけた。
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