‡プロローグ‡

4/19
前へ
/532ページ
次へ
後部座席の左側。 閉めた窓に頭を預けながら車内の沈黙を破ったのは、同じミスオカ研部員の夜月 桜(やげつ さくら)。 背中まで伸ばした黒髪を手でいじくりながら、気だるげに視線を運転席の方へ向ける。 「ねぇ由奈さん、あとどれくらいで着くんですか? 山道入ってからかなり走ってる気がするんですけど……」 「もう少しだけ我慢してね。あとちょっと行くとつり橋があるから、そこを渡ればすぐよ」 バックミラー越しに視線を返し、そう答えてきたのは野島 由奈(のじま ゆな)さん。 彼女が我らがミスオカ研の部長、野島 孝介(のじま こうすけ)の従姉であり、今向かっている村で宿泊施設の従業員をしながら生活をしている人だ。 とはいえ、今日初めて会ったばかりの人なのであまり詳しいことはわからない。 見た目的には二十代半ばくらいだろうか。 軽くウェーブのかかった髪と、三日月型の小さなイヤリングが個人的には印象に残る。 「つり橋? え? それちゃんと車で渡れるんですよね?」
/532ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1041人が本棚に入れています
本棚に追加